Thurston Moore
Trees Outside the Academy

個人的に楽しみにしていたサーストン・ムーアのアルバム。ソロ名義だと『Psychic Hearts』以来のはず。集っているメンバーがもうすでに只者ではないので、当然アルバムの完成度は高いんだけど、そんなことはこの際どうでもよくて、ともかく良い曲ばかりだなぁと思いました。ノイズとかインプロ系とかアヴァン・ロックとかにも首突っ込む癖に、きっちりロックとして仕上げたアルバムはきっちりロックしている。そりゃ当たり前なんですけども。ポップでロックで楽しくてしょうがない。

全身で楽しんでる雰囲気は色々試して何でもやってみる欲張り玄人ギタリストの香りが漂うけど、「やっぱロックだよな」とか教室の片隅で語っている高校生が試しに作っちゃったみたいなノリもあって、もうたまらんです。ばら撒かれる音ではなくて、聴いてる人間1人1人をがっちり掴む音。楽しすぎてこれ以上言葉が出てきません。




ジャケットはダサいけど中身が猛烈に面白いブルックリンの4ピース、ZSのアルバム。何が凄いかって、ジャズでミニマルやってる感じと言えばお分かりいただけるだろうか。軋んでいるような、それこそ奏者の血肉がガタガタいってるんじゃないかと思えるようなロックを演じつつ、ジャズの即興性がぶち込まれてるのです。さらに冗談みたいなヴォーカルとクラウトロックもびっくりのミニマル。何ですかこれ。聴き手が理解する暇を与えないくらいの、慌しくもセンスに溢れていて目まぐるしい展開。

独特とかそういう範疇を超えて唯一無二かも。僕の62ビットくらいの脳みそではジャズ+ミニマルとか寒い言い方しかできないんですけど、これまさに聴くロールシャッハテストで、聴き方のリテラシーが問われると言うか、完全に聴き手を煽ってくる。今年の名盤認定2枚目。


zzzsss.com

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The Intelligence
Deutoronomy


何か久々に納得できる「ポスト・パンク」のバンド、シアトルのINTELLIGENCE。A Framesでドラム叩いていたラース・フィンバーグのバンドみたいです。でも凄い気持ち悪いポスト・パンクで、聴けば聴くほど妙にポップさが増していく。ヴォーカルのダルい感じとか最高に格好良いんだけど、それを打ち消さんばかりに迫ってくる懐かしい臭漂うポップテイスト。それがネタとか狙っているんじゃなくて、単に好きだからポスト・パンクと混ぜてみましたみたいなところがまたダサくて良い。「混ぜるな危険」って書いてあるから混ぜてみようぜ、のノリ。

この全くクールじゃない風体はイギリスじゃなかなかできないんですよね。だってなんかこうロンドン的でありたいじゃないですか。分かっててクールさ台無しにはできないと思うんですよ。それやっちゃうのはアメリカですよ。無意味なことしてみた結果、音楽としては面白くなってるという不思議化学反応。もっとやれやれ。


myspace.theworldisadrag

〔Label Info〕

CALIKA

SEEDLING MOTHER




ブログってただのアーカイブくらいにしか思っていないので日付って書いた日じゃなくて音源買った日にしてあるんですよと業務連絡。何で買った日覚えてるのよって、フォルダ作って片っ端から記録してるからですよK君。現実とヴァーチャルのリンクすげぇすげぇって話。ちなみに定時で帰社してる日に必ず1枚は買ってるんですね。

それはさておき、

Calika名義の2nd。Simon Kealohaのソロプロジェクトなのだけど、1stの方は面白みがあるわけではないけど何となく聞き続けてしまう典型的なエレクトロニカ作品で、はっきりいってしまうと今回もAutechreっぽいIDM生音味で面白くはない。でもそれがエレクトロニカなんだよって言ってしまえばそうとも思える作品。良いでも悪いでも、好きでも嫌いでもない、何と言うか触る程度に気にかかる音。

じゃその触ってる部分って何かと考えると、カリカリ響く中にちょっと見え隠れする妙に哀愁漂うフレーズとか、可愛いメロディ。あとほんのわずかにある高揚感。やっぱり気がつくと幾度も聴いてる。僕がこの手法を好きってことなんだろうか。結局何を言っても好みの話なんですけども。


calika.com

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Cloudland Canyon
Silver Tongued Sisyphus


Wire誌の評価なんて信用できるかよーとか思っていたんですが、これは凄いですよ。圧巻。これでもかと言わんばかりに分厚く重ねられた音音音音音音音音音(←1個昔って字が混じってるとかありません)。2曲で12分程度の収録時間ですが、これ本当なら2時間位あっても良いと思えてしまいます。その分凝縮されているというか、濃い。

無論クラウト・ロックの血が流れていますし、エレクトロニクスの影響も感じますが、総じて言えるのは先端からの影響ではなくてそれぞれの要素の初期部分からの影響を感じます。このEPにしても1曲目の初期ミニマルっぽいぼんやりした美しさ、2曲目のプレ・サイケっぽい重々しいサウンド、どっちもよく考えると今現在の最も先鋭的な音って訳ではありません。源流とは何なのだろうか。しかし、凄い。アルバムに期待。


cloudland-canyon.com

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Baby Control
Best War


Ache Recordsの新人かと思ったらNorth Of AmericaとかThe Red Light Stingのメンバーが在籍しているようで、なかなか気合の入った刺々しさを見せてくれるカナダの4ピース、BABY CONTROL。パンキッシュでキャッチーなメロディーと女性ヴォーカルという取っ付きやすさとは裏腹に、意外と鋭いノイズ・ロックだったりする。"Best War"あたりの聴き手を油断させておいて後半ギターでスパスパ切り裂いていく感じは最初期のSonic Youthみたいで格好良い。

攻めている感覚と守っている感覚のバランスって凄く大事(どっちがどういう要素かは各人の受け取り方次第なんですけども)で、どっちかがやたら重いと常聴する気が起きないんですが、彼らみたいにユニークな作り方してる音は気がつくと結構ちょくちょく聴いてます。たまに聴くと良いなぁってものが良いのか、常聴できるものが良いのかって議論もあるんでしょうけども。


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SDNMT
THE GOAL IS TO MAKE THE ANIMALS HAPPY


SeidenmattからSDNMTへ改名しての3rdアルバム。もう4~5年は活動している筈なんですが、ポスト・ロックという呆然としそうなだだっ広いジャンルのなかで真摯と言うか、真面目過ぎるくらいに試行錯誤してその在り方を探し求めてるバンド。安易に「新しい要素」とかそんなものを取り入れる訳でもなく、手元にあるものをいかに組み上げて新しいものを作り出すか、というドイツ的研究心に溢れているその姿はロックの創作姿勢とはまたべつの形でありながらロックに近しいものであるように思えます。その意味では間違いなくポスト・ロック。

今作は積極的にヴォーカルを取り入れてみたり、軽快なドラムでビートを刻んでみたりと、深く考えなくてもそのポップさがよく分かる快作。でもなにより驚くのは、これまでの2枚のアルバムと根っこの部分では繋がっていて、全く同質のサウンドによってこのポップなアルバムが作り上げられているという点です。作るとか新しいとか、そういうのって何なのかと、ふと考えたくなる音。ポストとかそんなものではなくて、音の部分ではこれはアウト・ロックでしょう。とにもかくにも、素晴らしい。


SDNMT.com

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Gang Gang Dance
Rawwar


個人的にはBattlesよりGang Gang Danceだろ、と思っているのだけれどどうですか。アルバムでは呪術性とおどろおどろしさが増して、冥府魔道を突き進むAnimal Collectiveといったところですが、去年のジャパン・ツアーを見た時には「ひょー、やりたい放題だぜ!」とか思わずにはいられなかった音の暴力で、心底惚れました。その後リリースされたDVD作品がつまらなくて悶死。ダイナミックさのダの字もなくて、「アブストラクトな作品に仕上がって、聴き易さが云々」とかいうレコード屋の説明が薄ら寒かった。物は言いようですよ。

そんなこんなを経てのこのEP。ドラムとパーカッションはタイトでやや薄味な気もしなくもないですが(聴き易いと言えばまぁそうかも)、思わず噴出しそうになるエスニック・サウンドが垂れ流される'Nicoman'、GGD的にはダンス・ナンバーなんだろうなぁと思われる'Oxygen-Riddim'、ダブステップ風なミックスの'The Earthquake That Frees Prisoners'と、かなり盛り上がってまいりました。もうこの時点で魔窟な感があると思った方は、足を踏み入れない方のかもしれません。


Gang Gang Dance.com

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Doves
Some Cities


なぜか一時やたらと日本企画盤とかがリリースされていたDOVES。DOVESが好きなわけではなくて、SUB SUBが好きだった僕には、内向的だったりアンビエントに傾いたりする彼らの姿勢が妙に余裕がない感じに見えてしょうがなかったんですよね。'Spaceface'って確かに何にも考えてない、ただ楽しくて踊れてそれで良いじゃないって曲だったんですが、その能天気さこそ仕事の煩わしさとかを忘れるための週末のクラブに必要なもんだろうに、って思ったのです。この3人はそういうことをしなきゃならない、凄く楽しい連中なのですよ。

このアルバムで久しぶりにその能天気さが覗いてた気がして、ちょっと嬉しくなりました。これだったらハシエンダってかかるだろうと思える匂い。最近はライブで'Spaceface'をやることはないらしいんだけれど、それはもうSUB SUBの音に寄りかからないでも、あの時やってたことをまたやれるよって表明ではないかと。でも、また日本じゃ下火になってきてるか?


doves.net

myspace.dovesmyspace


//sub sub//

myspace.subsubmusic

Liars
Liars


去年リリースした『果て無きドラム』というタイトルがイカしていたLIARS。活動の拠点をベルリンに移しての4thアルバム。メンバーが1人減って3ピースに。メンバーの減少が関係しているのかどうかはともかく、前作の持っていた重苦しさや息苦しさ、先の見えない混沌とした感覚はなくなって、前を見据えているポジティブさが顕著。s/tになっていることも考えれば、これが本当の俺たちなんだってことなんだろうか。ダビーな打ち込みがあったりして目も覚める。

緊張感とか、ノー・ウェーブの持つキリキリと引き絞られるようなタイトさが今まで以上にあるのだけれど、それで張り詰めた糸が切れてももう一回かけなおしちゃうもんね位の前向きなノイジー・サウンド。Sonic Youthとかその辺りに近い雰囲気だ。不健全で前向きに検討いたしますサウンド。何か今の自分にしっくり来る。


LIARS.com

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